藤井内閣参与と橋下大阪市長の戦い方はとんでもなく違います
マスコミは分かり易い構図が大好きですから「バトル勃発継続中!」などと煽りたがりますが、その後の経緯を追っているとお二人の反応は全く噛み合っていないことが分かります。
お互いの主張が論争の進展によって錯綜してきたということではなく,まったく論争が行われていないという意味です。今の構図は,藤井参与がサイトなどで「7つの事実」に関する論理的な見解を求め続けているのに対し,橋下市長は「答える価値もない」といわんばかりの態度で完全に無視を決め込んでいる構図になっています。バカ学者の戯言というイメージ戦略だけで5月まで逃げ切ろうとしているとしか思えません。これまでの市長の対応をウォッチしてきた感触からすると、おそらく・・・ですが、橋下市長は今後藤井氏からの問題提起に真正面から回答するつもりはないと思います。前回の関西空港がどうのこうのという説明?で終わりにしようと考えているのではないでしょうか。なぜならその後、マスコミからのツッコミもなかったし、「筋が違う」と指摘した平松元市長の反論も短すぎてネット上で全く話題にならなかったからです。常に全体の雰囲気というか「聴衆のベクトル」にアンテナを張っている人ならば、あえて寝た子を起こさずにこれで静かに店じまいという判断をしている筈だと思います。今後の対応としては,また藤井氏が何か目立つ動きをしてきたら,市長お得意の定例会見で「自らが答える価値もないバカ学者」「度胸があるなら公開討論」という眼くらまし戦術を乱用し軽く流してしまおうとするでしょう。少なくとも私にはそう見えます。
実は関西空港の話は膠着した状況を動かし,議論を前進させるチャンスでした。市外への流用という言葉に初めてスポットライトが当たったからです。虎の子の機会を逸したといえばいえなくもありませんが,藤井氏としてはチャンスを活かす強力な方法がなかったことも事実です。もちろん藤井氏は関西空港の話に関して,17日、サトシフジイ・ドットコムのサイトで論理的な反論をされています。同氏としてできる最大限の言論活動だと思いますが、如何せんこの記事を果たしてどれだけの大阪市民が目にしたでしょうか(ちなみにレベルの違う話で恐縮ですが,私も前日同様の反論記事をアップしていましたが日本の誰にも読まれませんでしたw)。
橋下市長が会見で発言したことは新聞,テレビなどですぐに取り上げられお茶の間に生の声として伝わりますが,藤井氏のネット記事が大阪市民の有権者の耳目に届くためには実に数多くのハードルがあります――有権者が,まず第一にインターネットができること,大阪都構想に関心があること,ネットを検索する時間があり労力を厭わないこと,その上でたまたま藤井氏のサイトにアクセスできる幸運を持っていること,活字が読め記事を理解できるリテラシーがあること等々です。これだけの条件をクリアできる人となると人数はかなり絞られてしまいます。これを踏まえると,今回の反論に限らず「7つの事実」も含めた藤井氏の見解を知っている大阪市民はきわめて少数派であって,逆に橋下市長の言説は広く市民に浸透していると考えるのが自然です。橋下市長は藤井氏が「権力による言論封殺だ」と指摘したことを受け,「藤井参与自身も内閣の権力側に居る」と発言しましたが,百歩譲って仮にお二人とも同列の権力者であったとしても一般市民への発信力という意味では勝負にならないくらい不平等な差が存在しているのです。残念ですがこれが世の中というもので,致し方ありません。難しいですが言論を広めるためのさらなる工夫が求められるでしょう。
1 サイトのさらなる改善
藤井氏の武器はその緻密的な頭脳とネット上の良識派?の方々の絶大な支持だと思いますので,今やられているブログ記事を利用した言論活動は,冷静な情報提供という意味においても非常に有効だと思います。あえて欲をいえば,次のような改善策が考えられるでしょうか。
◆「7つの事実」を理解するための前提となる基本知識(県や市の予算とは,政令市とは特別区とは,2200億円の内訳とは・・・等々)がブログに書かれていないため,前知識のない人には若干理解しづらい部分があるのではないでしょうか。手間がかかりますが「解説コーナー」のようなものを作るか,あるいは語注として他ページへリンクを貼るかすればもっと分かりやすくなると思いました。
◆ サトシフジイ・ドットコムのページにSEO対策(キーワード最適化,相互リンク,バナー作成等々;検索エンジン最適化のこと)を施しているかどうか分かりませんが,これを強化すればページアクセスがさらに増えるかと思います。簡単ではありあませんが例えば「大阪都構想」のワードでGoogle検索したときにトップページに出てくるようになれば巨大な効果が得られます。
2 マスメディアの活用
大阪市の有権者には様々な職業・年齢の方がいて,すべての方がインターネットを情報獲得のツールとして使っているとは限りません。年齢の観点でいうと,すべての年齢層でもっともニュースの入手に利用している媒体はダントツでテレビです。ちなみに50台以上の年齢層は投票率が高いのですが(46回衆院選挙の例:66~78%)特に退職した60台以上の方は視聴時間が極端に長いこともあり、テレビの宣伝効果は二重丸です。
インターネットで情報をとる人は40台以下の若い層に多い傾向があります。ですが,ネット内の玉石混交の情報群から藤井氏の記事を探し出すのは骨が折れると思いますし,そもそも40台以下の若い人たちは投票率がなぜか異様に低い(35~57%)のでその効果は意外と小さいでしょう。前回の衆議院選挙においてネット上では「次世代の党」が優勢だったのに実際の選挙では壊滅してしまったのはこういった理由があったと推察しています。
テレビに次いで利用頻度が高いのはインターネットよりやはり今でも新聞です。30台以下の若者は半分くらいの方しか新聞を読みませんが,50台以上の人になると9割程度が読んでいます。50代以上は投票率の高い世代ですのでテレビと同じくらい二重丸ですね。さらにいうと,時間が過ぎたら見れなくなってしまうテレビ番組と違い,新聞はいつでも読めますから記事が有権者に届く確率はぐっと高まります。藤井氏はおそらく新聞業界などにも知り合いが多いと思いますのでインタビュー記事などの掲載をしてもらったら「7つの事実」が大阪市民に一気に広まるのではないでしょうか。ちなみに産経新聞ですと大阪市で16万部くらい出ています。(他紙はデータがありませんでした。)
ついでにいうと、新聞掲載はタイミングが非常に重要です。2月の下旬あたりに池上彰さんが橋下市長と公開討論をするかもしれないという噂があって、池上氏がどんなスタンスで市長に迫りどんな落としどころを考えているのかまったく見えないので、もしそうなれば、藤井氏の新聞掲載はそれよりずっと後のほうがいいと思います。5月頭くらいの掲載であれば、ほぼすべての反論に再反論することができます。
3 その他の活動
講演会を開けば生の声を市民に届けることができます。ただし,橋下市長の講演会や大阪維新の会による野次などの妨害行為が予想されますので事務局対応のやり方には少し気を遣う必要があるかと思います。また,選挙に類似した活動というと街頭演説やポスティングが定番でしょうが,もし大阪市内に支援団体があれば彼らへの協力という形で行うのが自然でしょう。
いずれにしても,すべての言論活動の基本とすべきは「大阪市民が得するのか損するのか?」を強調することではないかと思います。「損になる」あるいは「損するかもしれない」ことが分かったら大阪に限らずどこの市の人でもまず都構想に賛成する人はいないと思います(厳密にいうと都構想というよりも政令市廃止に対して、です)。もちろんその際には、相手は「大阪府民」ではなくて「大阪市民」であることを決して忘れてはいけないでしょう。
私自身は他県の人間ですが、この件に関しては本当に大阪市民に正しい判断をして欲しい気がします。一人の施政者のアンフェアな進め方のせいで後悔するようなことがあっては、投票した人たちだけではなくて将来の大阪市の子供たちにも「損」を背負わせてしまうような気がするからです。(黒猫翁)