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黒猫翁の言いたい砲弾

新聞やテレビを賑わしていることについて思ったことを書いていくページです。公開の備忘録?ですかねw

橋下市長はなぜ藤井氏への反論書面を出さないのか?理由はあります

最近、今回の橋下市長との話題に刺激を受けてそのお相手である藤井聡氏の業績や言論の内容について調べているのですが、そのなかで早稲田大学原田泰(ゆたか)氏書面論争が行われていました。

 原田氏は「リフレ派」を代表する経済学者で、ついこの前、日銀の審議委員になった方ですが、公共事業の効果をとことん否定している学者で、藤井氏がアベノミクスの第一と第二の矢の組み合わせでデフレ脱却できるという学説を提唱しているのに対し、第二の矢である公共投資は少なくとも経済的には不要の施策であり、デフレ脱却の主役は第一の矢である金融政策、とりわけ量的緩和であるというのが原田氏の見解です。国土強靭化構想を国の施策に昇華させ公共事業を今後強力に推進しようとしている藤井氏にとっては白黒をはっきりさせなければならない論者の代表的存在といえますので、あえて書面論争に踏み切ったのだと思います。一連のやり取りは下記「月刊VOICE」の記事(時系列)に詳しいので、経済問題に興味のある方は是非ご覧ください。(本件に関係する記事は別の機会にご紹介したいと思います。)

[藤井氏]

[安倍景気の行方] ついに暴かれたエコノミストの「虚偽」〔1〕 | PHPビジネスオンライン 衆知|PHP研究所

[安倍景気の行方] ついに暴かれたエコノミストの「虚偽」〔2〕 | PHPビジネスオンライン 衆知|PHP研究所

[原田氏]

[アベノミクス第二の矢]ついに暴かれた公共事業の効果〔1〕 | PHPビジネスオンライン 衆知|PHP研究所

[アベノミクス第二の矢]ついに暴かれた公共事業の効果〔2〕 | PHPビジネスオンライン 衆知|PHP研究所

[藤井氏]

【藤井聡】原田泰氏の反論を「検証」しました。 | 三橋貴明の「新」日本経済新聞

[藤井氏]

アベノミクス「第二の矢」でデフレ不況を打ち抜け | PHPビジネスオンライン 衆知|PHP研究所

[原田氏]

アベノミクス「第一の矢」でデフレ不況を打ち抜け | PHPビジネスオンライン 衆知|PHP研究所

 素晴らしい論争だと思います。如何せん学者同士の議論ですから当然専門的で理解しづらい部分もありますが、丹念に読めば言わんとしていることは分かりますので読者なりにどちらの見解が正しいか判断することができます。

橋下市長もこれをやればいいのです。とりわけ論点ははっきりしていますし(「7つの事実」のみ)、難しい専門知識もほとんど要らず、別に橋下市長が学者じゃなくてもできるはずです。またあえて論争と銘打つのもおかしなくらい単純な争点ですから、質問に対する回答という形をとっても構わないでしょう。まっとうな大阪市民であれば不毛な罵り合いの公開討論で両者リングアウト負けの結末を見せられるよりもはるかに有益な対応だと思います。

 

 こんな優れた方法があるのにもかかわらず一切乗ろうとせず、代わりに罵倒やこき下ろしの言葉を公開の記者会見で口にし(名誉棄損といっても過言ではありません。)、大阪維新の党名で相手の上司に意見書を送り付け、公開討論に応じなければ国会で維新の党の議員に本件を取り上げさせるなどと強弁する。これは自治体の長というよりそもそも国民・県民・市民として正しい振る舞いといえるでしょうか。

 さらにいうとネット上では、維新の党や橋下氏個人の支持者らしき一部の人から「公開討論から逃げるな」という一点張りのコメントが大量に流され、それに刺激された一部のマスコミが週刊誌のような煽り記事を掲載し、これがさらに匿名のネット住民による人格攻撃をエスカレートさせる・・・といったことが行われているようです。橋下市長が藤井氏の指摘に対する回答を持ち合わせていないとすれば、この状況は非常にありがたいでしょう。なぜなら池の水面をばちゃばちゃさせて水中を泳ぐ鯉の居場所を隠すようなもので、大阪市民に知って欲しくないことから目を背けさせることができるからです。

 また、ネットも含めて大阪市長側の一連の反応は、もう一つ重要な効果をもたらしています。それは「言論」を封じ込める圧力になってしまっていることです。普通の一般人がこれだけ徹底した嫌がらせを受けると社会生活に支障が出てくるのを恐れて口を閉じがちになるのが当然ですから、いくら市長が圧力などかけていないと強弁しても常識的には納得してもらえないでしょう。権力による言論封殺というのはパワーハラスメントと似ていて、加害者が何と言い訳しようと被害者が圧力と感じた時点で成立すると考えられるからです。施政者の言動や品格にうるさいところであれば解職請求(リコール)の声が高まってもおかしくない程の有様ですが、選んでしまったものは仕方ありません。

 それにしても大阪都構想の正味の議論がこれまでほとんど行われてこなかったのはいったい何故なのでしょうか。

 もちろん都構想自体は大阪ローカルの話とされていて直接の利害関係者以外は関心を持たれなかったことが大きいとは思います。ですが、橋下市長が府知事時代から強力に推し進めてきた案件でもありもっと広まっていて然るべきところ、二重行政の解消というキャッチフレーズだけが先行していて、市民や府民にとってのメリットやデメリットの議論が全くといっていいほど深まっていません。これは構想を提案している側の不手際ではないかと考えます。橋下市長はタウンミーティングを何度も開催していて理解は広まっていると発言されていて、私も動画をいくつか拝見しましたが、残念ながらあれは「議論」ではありません。質問者に対してお決まりのQA回答を基に市長が一方的に高いところから演説しているだけでデメリットに関する部分がまったくといっていいほど深掘りされておらず、住民説明会にありがちなアリバイ作りという側面は否定できないでしょう。

 要するに橋下市長が2010年に都構想を打ち出して以来5年ものあいだ、デメリット情報については市長側からまともな説明が一切されておらず(木で鼻を括ったような数行の役所説明はありますよ。)また、別の団体や個人が指摘したデメリット情報についても市長が真正面からスポットライトを当てて議論を深めたことが一度もないのです。そのような情報は大阪市民には行き渡らずネットの片隅で埋もれていき、市長の定例記者会見で耳障りのいい発信情報だけが市民の頭に蓄積されていきます。信じられないでしょうが事実だから困ったものです。
 そして投票まで2か月半に迫った現在ですらその状況は大きく変化していないと思います。むしろ情報を隠そうとする姿勢が露骨になってきたのではないでしょうか。大阪市職員に対する取材応対禁止を求めたことは実に驚くべきことです。さきほど不手際と申し上げましたが、藤井氏に対して回答を出そうとせず、その代わりに同氏に浴びせかけている不快な言動からすると「故意」にそうしていると疑わざるを得ません。中国のような国家と比較すべくもありませんが、橋下市長はもはや中国流の「情報統制」の世界に踏み込んでしまったのではないかと老婆心ながらとても心配しております。
 もっとも藤井氏に関していえばまったく臆することなく、これほどの橋下市長からの嫌がらせに対し発言を控えるどころか、なんと専門のサイトを立ち上げて、以前よりさらに強力な言論活動を展開しておられます(笑)。藤井氏のこの努力によって大阪都構想の問題点を初めて知った大阪市民もどんどん増えているに違いなく、情報提供の観点から素晴らしいことです。逆に市長にとっては藪をつついたらしゃべる大蛇が大暴れし始めたようなものでまったくの大誤算でしょう。


 問題は新聞等のマスコミの対応だと思います。大阪市の定例記者会見の動画をいくつか拝見すると、前日に橋下市長に対する批判的な記事を掲載しようものなら会見で名指しで一方的に罵られたり出入り禁止処分にされたりするのですから如何に海千山千の取材記者といえども筆勢が鈍るというものでしょう。あれは取材を「受ける側」から「する側」に対するパワハラの一種です。許認可権を持つ役人が事業者と応対するときの態度とそっくりで不愉快このうえなく記者の方々にはお気の毒な気持ちもありますが、これを我慢していることは橋下市長の露骨な情報統制にはっきりと加担していることになります。仮にもジャーナリズムを標榜した報道機関としてそんな情けない状態でいいのでしょうか? マスコミがこのまま口をつぐんだままで5月17日を迎え、情報不足が原因で大阪市がとんでもない事態になった場合、大阪のみならず日本全国の世論は今度こそ全マスコミを許さないでしょう。報道各社は横並びで一斉に立ち上がるべきではないかと思います。

 大阪市民にとっては5月の投票日は「得をするか損をするか」の分水嶺です。すべての投票者が大阪都構想(正確には協定書の内容)の功罪を漏れなく知悉した上で正しい投票行動をとるべきと思います。少なくとも「維新の人らが太鼓判押してるからマァ特に損はせんやろ」といった軽い気持ちで投票したら後でとんでもないことになる可能性があることを大阪市民の皆様に心に刻んでいただけますよう祈念しています。(黒猫翁)