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黒猫翁の言いたい砲弾

新聞やテレビを賑わしていることについて思ったことを書いていくページです。公開の備忘録?ですかねw

【経済】第一の矢「異次元の量的緩和」はホントに効いているのでしょうか?(1)

 ひとつの国には大体中央銀行というのがあって色んなオペレーションをしてその国の経済をコントロールしています。そのなかに「買いオペ」というのがあります。買いオペというのは一般の金融機関が持っている国債を日銀が買い取ることで、その対価の支払にあたって中央銀行は、支払額相当の貨幣を「増刷」し(実際はPC上で帳簿上の操作を行うだけかと思います),その額を相手の金融機関が中央銀行内に持っている当座預金にザっと流し込みます。
 上で述べた一連の操作をインフレ目標値が満たされるまである意味無制限に続けることを日本では量的緩和と呼んでいて、これにより金融機関が中央銀行内に持っている当座預金の残高はぐんぐん膨張していきます。日本では中央銀行である日銀がアベノミクス政策の第一の矢として2013年度から量的緩和に突入しました。その結果、2014年12月までにマネタリーベース(MB)がなんと120兆円も増えました。(マネタリーベースというのは市中を出回っている現金と日銀当座預金残高を足したお金の数量です。)
 日銀当座預金は常に法定準備額(預金者保護の観点から設けられている制度)以上の残高を維持することが必要ですが、これを超えてあまりにも積みあがってくると死に金になってしまいますので、通常であれば金融機関は膨れ上がったお金を何らかの方法で運用しようという気持ちになります。そんなときに「お金を貸してください」という企業なり個人が出てくれば(日銀に売却した)国債よりちょっとだけ高い金利でドンドン貸そうとするでしょう。これによって日銀が増刷したマネーは実体経済の世界にすべりこんでいきます。こうなれば日銀もマネーを銀行に流し込んだ甲斐があったし、銀行もちょっとだけ儲けられて有難い、また企業や個人も貸してもらえて助かりましたという――近江商人の「三方良し」という状況が生まれるわけです。
 金融機関による「貸出」が日本全体で行われるようになれば、貸し出されたお金が信用創造という仕組みによってどんどん増幅していき(つまり預金口座が新たにたくさん作られ預金の総残高が増えるということです。)、果てはGDP(国内総生産)を上げ、国の税収が増加することが期待されます。これが量的緩和の理想的な姿であり最終目標とする絵姿です。


 こうした状況がきちんと進捗しているかどうかを図るバロメータとして何があるかというと、直接的にはもちろん「民間金融機関の貸出量」で、一番分かり易いですね。でも「マネーストック」という指標もよく使われます。マネーストックとは大まかにいって市中を出回っている現金と金融機関の預金総額を足した値です。日銀当座預金に積み上げたお金(MB増額分と理解できます。)が100%実体経済に流れ込み信用創造によって金融機関の預金総額が増幅していけば、マネーストックはMBの増額分以上の増加を示すことになります。1980年代はインフレ期に当たりますが、そのときの統計データを見てみると、MBの増加に対してマネーストックはかなり感度良く増大していったことは否定しようのない事実です。


 理屈としてはとても効果を発揮しそうな「量的緩和」――この正否を判断するにはまずは外国の例を見るべきだと思います。量的緩和を行った国というとやはり思い浮かべるのが米国、そして英国、いわゆるアングロサクソン系の国ですね。細かい話は抜きにして、「結果」がどうなったのかを見てみましょう。下のグラフです。

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 赤い線がMBで青(黒っぽい線)がマネーストック、緑が金融機関の貸出です。

 両国ともリーマンショック以降、物凄いペースで量的緩和を行いました。緩和前のマネタリーベースと比べると、英国で2.5倍、米国に至ってはなんと3倍です(笑)。これだけマネーを中央銀行の当座預金にジャブジャブ落とし込んだのですから、さぞや金融機関の貸出が増えて、マネーストックも増えたに違いない・・・と思うのが普通です。ところがどっこい、グラフを見れば分かりますが、青のマネーストックは全然増えていません。緑の金融機関の貸出に至ってはむしろ減ってしまっています。このデータをごくごく普通に結論付けると、


少なくとも米国、英国において量的緩和政策は国内のマネーストックと金融機関の貸出量を上向きにすることができなかった


ということです。これは「事実」ですから如何なる人であっても否定することはできません。2012年以降のデータはグラフにありませんが調べてみるとやはり目をみはるような上向きの変化は認められません。

 米国は量的緩和を終えて、今度は金利に目を向ける政策に入っているようですが、中央銀行量的緩和によって抱えることになった膨大な量の国債をどうするのでしょうか。中央銀行は国の一部なんだから別にバランスシートを気にする必要もなく国債なんて期落ちを待ってりゃいいよという考え方もあってある意味真実だとは思いますが、国民やG7に対する説明責任もあるしソブリン格付けなどの話もありますから色々と面倒ですね。米英の経済についてはまた別の記事でご紹介したいと思います。
 次回は日本の状況について紹介します。(黒猫翁)